2014/08/30 (Sat) 21:46:50 Catil. 1.16 - 兎狐

第16節に入ります。

すみません、盛大に日付を間違えておりました。8/~ としていたのを 9/~と改めました。

(1) nolimbre さん — 9/10
quotiens iam tibi extorta est ista sica de manibus, quotiens excidit casu aliquo et elapsa est! quae quidem quibus abs te initiata sacris ac devota sit nescio, quod eam necesse putas esse in consulis corpore defigere.

(2) 810874さん — 9/13
Nunc vero quae tua est ista vita? sic enim iam tecum loquar, non ut odio permotus esse videar, quo debeo, sed ut misericordia, quae tibi nulla debetur. venisti paulo ante in senatum.

(3) fnkmさん — 9/19
quis te ex hac tanta frequentia, tot ex tuis amicis ac necessariis salutavit?

(4) 兎狐 — 9/23
si hoc post hominum memoriam contigit nemini, vocis exspectas contumeliam, cum sis gravissimo iudicio taciturnitatis oppressus?

(5) nolimbre さん — 9/27
quid, quod adventu tuo ista subsellia vacuefacta sunt, quod omnes consulares qui tibi persaepe ad caedem constituti fuerunt, simul atque adsedisti, partem istam subselliorum nudam atque inanem reliquerunt, quo tandem animo tibi ferendum putas?


___
[15] text (perseus) http://goo.gl/uqzmep

Edit
Delete
2014/09/09 (Tue) 18:30:54 Catil. 1.16 (1) 前半 - nolimbre

今回も間に合わせることができそうになく申し訳ないのですが,
とりあえずできている前半だけお送りします.
後半はおそらく土曜日になるかと思います.

quotiēns iam tibi extorta est ista sīca dē mānibus, quotiēns excidit cāsū aliquo et elapsa est!

その短剣は,もう何度お前の手からねじり取られ,何度どこかに偶然落とし逸してしまったのだろうな!

【 extorta 】
 extorqueō, -ēre, extorsī, extortus 「ねじり取る」

【 sīca 】
 sīca, -ae 「短剣」
 この文の主語

【 excidit 】
  excidō  pres. も pref. も 3sg. は同形だが,elapsa est があるのでここでは perf. 3sg.
 「(意図的でなく)すべり落ちる」

【 elapsa est 】
 ēlābor, elapsus
 excidō と意味は似ている.

前半は何度も殺害が強制的に阻止(防御)されたこと,後半は人知れず偶然中止になったことを指しています.

Edit
Edit
2014/09/10 (Wed) 21:16:42 Catil. 1.16 (1) 前半 - 兎狐

のらんぶるさん

前半のご提出、ありがとうございます。

> quotiēns iam tibi extorta est ista sīca dē mānibus, quotiēns excidit cāsū aliquo et elapsa est!

● mānibus > manibus (1.10 (2) でも出てきた māne (< mānus) は "good" なので、ややこしいですけどこの manus とは区別されます) ● aliquo > aliquō ● elapsa > ēlapsa

> その短剣は,もう何度お前の手からねじり取られ,何度どこかに偶然落とし逸してしまったのだろうな!

文法解釈はお書きの通りかと思いますので、少しだけ補足としてコメントさせて頂きます。

___

● torqu-, tors-, tort- の語幹変化について
余裕がありましたらこちらもご覧ください→【籐】「s- 完了幹形成法 "1.3. rs-, ls- (語根末子音の脱落)"」
http://fennecc.blog.fc2.com/blog-entry-28.html#1.3.

● excidit, elapsa における接頭辞 ex- の機能
  excidere [ex- + cadere (落ちる)] →「落ちて(なくなる)」
  ēlābī [ex- + lābī (すべり落ちる)] →「すべり落ちて(なくなる)」
お訳しの通り「落として(手元から)無くなる」の意味になります。よく語感を掴まれてますね。
また、有声子音 b は s の前で無声化するので、*bs- は ps- になります (anticipatory assimilation と呼ばれるものです)。

●cāsū
お訳しのとおりになろうかと思います。「偶然に」 (OLD cāsus 3c)
 3 Accident, chance. b ~u, by accident as
opposed to intention, etc., accidentally, unin-
tentionally. c ~u, by chance, as it happend.

● et ēlapsa est
ご指摘の通り、excidit とほとんど意味が同じで、無くても意味自体は変わりませんね。ということは、何らかの修辞的な効果が狙われたものである可能性が考えられます。思うに、"quotiens excidit casu aliquo" で終わると最初の "quotiens . . " の長さとの釣り合いが取れないため尻窄みな印象を与えかねないので、わざわざ付け足されたのではないでしょうか。なので、ここの訳出は難しく、お訳しのように省略してしまう他無いように思います。


Edit
Edit
2014/09/13 (Sat) 20:39:42 Catil. 1.16 (1) 後半 - nolimbre

コメントありがとうございます!続けて後半を投稿します.

quae quidem quibus abs tē initiāta sacrīs ac dēvōta sit nesciō, quod eam necesse putās esse in cōnsulis corpore dēfīgere.

執政官の身体に打ち込むべしと考えてから,その短剣がお前によって如何なる汚らわしいものとされ呪われたのか,私には到底分からぬ.


【 quae 】
 (接続詞的に)そしてその……
 ここでは前文の ista sīca を受けている.sit の主語でもある.

【 quibus ... sacrīs 】
 sacrīs は形容詞 sacer, -cra, -crum から作られた中性名詞 sacrum の pl. か?

【 initiāta 】
 < initiō, -āre, -āvī, -ātum; 始まる,伝授する

【 dēvōta 】
 < dēvoveō, -ēre, -vōvī -vōtum; 身を捧げる,呪う
 dēvōtus, -a, -um で愛着している,傾倒している,という意味になることもあるが
 ここでは動詞 devoveo 本来のニュアンス「呪う」に近い.

【 quod 】
 ここでは「〜して以来,〜してから」の意味でしょう.

【 dēfīgere 】
 打ち込む,(目や意識を)向けさせる・集中させる
 (物理的・精神的いずれの意味でも使える.ここでは「短剣を身体に打ち込む」)

Edit
Edit
2014/09/14 (Sun) 11:11:37 Catil. 1.16 (1) 後半 - 兎狐

のらんぶるさん

ありがとうございます。
この後半、かなり読みにくいですね。1つ1つ吟味してみようと思います。


> quae quidem quibus abs tē initiāta sacrīs ac dēvōta sit nesciō, quod eam necesse putās esse in cōnsulis corpore dēfīgere.

> 執政官の身体に打ち込むべしと考えてから,その短剣がお前によって如何なる汚らわしいものとされ呪われたのか,私には到底分からぬ.

___

【 quae quidem quibus abs tē initiāta sacrīs ac dēvōta sit nesciō 】

「そして、実のところ、私はお前がどのような儀式を開祭してその短剣に不思議な力を授けたのかは知らない。」

● quae ●
お書きの通り、relative as a connection (= et ea = et ista sica) 間接疑問文中の主語の位置にあたります。
 「そしてそれ(短剣)が . . 」
● quidem ●
 「実際」
quidem については Solodow がまとまった説明を提供してくれるので参照されることが多いです。そこでは quidem の働きが大きく5つに区分されています。ここはそのうちの "Emphatic quidem" にあたるもので (p. 96 ff.)、この quidem は 'quidem follows and emphasizes a pronoun, either demonstrative or personal or relative' (p. 98) と言われます。ここでは "quae (et ea) quidem . ." と関係代名詞が強調されます。また、'we may translate it "really, indeed, truly" ' と言われるとおりです。
  --Solodow, J.B., (1978), "The Latin particle QUIDEM" (American Classical Studies no.4), The American Philological Association.
● quibus . . sacrīs ●
仰る通り sacrum の複数奪格で、手段が表されていると思われます。
 「いかなる儀式によって」
hyperbaton (転置法)が用いられて強調されています。
● abs te initiata ●
この quibus sacris の間に押し込められた abs te initiata (sit) は、形式上は quae (sica) を主語として devota sit と ac によって繋がれているのですが、initiare 「(儀式を)始める」の意味からそれだと通らないので、ここは恐らく位置的にも実際的には sacri を主語とする表現かと思います。 abs te は initiata のみにかかり、devota にはかからないものとして読みます。
 「(いかなる儀式が)お前によって開祭され」
● devota sit ●
間接疑問文中なので接続法が用いられています。 dēvovēre {pf. subj. act. 3sg.} には「(儀式によって)魔法をかける、不思議な力を授ける」という意味があるようです。 vovēre の「(神に)誓う」という意味が基礎にあろうかと思います。接頭辞 de- によって誓いを立てる際に捧げものをする人間の方に重点を置いた表現になるため、「犠牲を捧げる」となったのでしょう。その完了受動分詞 ppp. dēvōt- (犠牲が捧げられた) から、魔力が得られたということが思い浮かべられ、このような意味を表すようになったのだろうと思います。



【 quod eam necesse putās esse in cōnsulis corpore dēfīgere 】

「お前はそれを執政官の体に突き立てなければならないと考えている(のは事実である)」

● quod ●
この quod は理由でしょうかね。ちょっと自信がありませんが、もし理由としてとるなら、この quod 節は "nescio" にかかるというより、abs te initiata sacris にかかるような感じになろうかと思います。



つらつら書いてきましたが、あまり自信がもてませんので、どなたか批判してくださればと思います。

Edit
Edit
2014/09/16 (Tue) 07:27:09 Re: Catil. 1.16 (2) - 810874

またもや遅れてしまってすみません。
ただいま辞書などがあまり使えない環境にいるので、不十分な点も多いかとは思いますが、よろしくお願いします。

Nunc vērō quae tua est ista vīta? sīc enim iam tēcum loquar, nōn ut odiō permōtus esse videar, quō dēbeō, sed ut misericordiā, quae tibi nulla dēbētur. vēnistī paulō ante in senātum.

「さて、いったいおまえの人生はどのようなものか? いま私は、憎しみによってつき動かされた(私はそうあるべきだが)のではなく、哀れみによってつき動かされた(それはおまえにはふさわしくないが)のだと思われるように、話したいと思う。おまえは、少し前に元老院に行ったな。」

sīc: 二つの ut と呼応する。
loquar: 穏やかな主張を表す接続法。
videar: 目的文をつくる接続法。
quō dēbeō: dēbeō の後に odiō permōtus esse を補う。quō が奪格なのは?
misercordiā: 直後に permōtus esse videar を補う。
nulla: nōn の意味。

Edit
Edit
2014/09/17 (Wed) 22:37:29 Re: Catil. 1.16 - nolimbre

兎狐さん

コメントありがとうございます.
abs te initiata はまだ語感があまりつかめませんが,事実上の主語が sacri であることを認めれば意味が通りますね.
quod は,研究者羅和辞典の quod の 5 に「〜以来,〜してから」というのが載っていたので,投稿した訳ではそれを採ってみました.ただ「突き刺さねばならぬと考えてから剣を呪った」がどの程度この文脈に合うのかはちょっと自信がありません.

Edit
Edit
2014/09/18 (Thu) 12:08:48 Re: Catil. 1.16 (2) - 兎狐

810874さん

ありがとうございます。

> Nunc vērō quae tua est ista vīta? sīc enim iam tēcum loquar, nōn ut odiō permōtus esse videar, quō dēbeō, sed ut misericordiā, quae tibi nulla dēbētur. vēnistī paulō ante in senātum.

nulla > nūlla

> 「さて、いったいおまえの人生はどのようなものか? いま私は、憎しみによってつき動かされた(私はそうあるべきだが)のではなく、哀れみによってつき動かされた(それはおまえにはふさわしくないが)のだと思われるように、話したいと思う。おまえは、少し前に元老院に行ったな。」

お待たせいたしました。enim の機能など、少し調べるのに時間がかかってしまいました。
では、また少しコメントを付けさせて頂こうと思います。

___

【Nunc vērō】
  // nunc : OLD nunc 11 —(introducing a fact or consideration opposed to a previous speculation, wish, or sim.) (But) as it is ; (often w. adversative conjs. or advs.)" 直前の完了時制から現在時制への切り替えの役目も果たしていると思います。
  // vērō : (Kroon., p. 320-321) —"We find VERO also at larger thematic breaks in the discourse, at the begining of a new expository or narrative section." 効果としては注意喚起が期待されていようかと思います.


【 quae . . est . . vita】
  // quae は属詞(様態)を問う疑問形容詞で、お訳しの通りになります。
  // また、指示形容詞 iste には pejorative (軽蔑的) な意味があるので、訳出しても良いかも知れません。
  「ところで、実際、お前のその生活はどのようなものか」


【sīc . . loquar, ut . . videar 】
  お訳しの通り、「そのように思われるように、話そう」となります。ただ、この ut . . 節は、Shapiro では目的文であるとされていますが、私は Maclardy 同様、結果文ではないかと思います (OLD s.v. sīc 3b)。というのも、「そのように話すことで、~と思われる」→「~と思われるように話す」であって、「~と思われるために話す」わけではないからです.しかし、異論がありますし、この解釈が妥当かどうか慎重に判断しないといけないと思いますので。お気づきの点があればご意見を下さい。


【 enim 】
  ここは根拠の導入ではなさそうです。Kroon (p. 189 ff.) を探ってみると "assertive illocitionary force" (主張型の発語内の力) と呼ばれる機能がここと一致するように思われます。しかし、ここは事実について陳述する主張型 (assertive) ではなく、話し手がある行為を約束する行為拘束型 (commissive) に当たるのではないかと思います。enim によっては基本的に合意 (consensus) が目指されるので、その観点からこの enim の機能が出てきたとみることも出来そうです。   ※オースティンは発語行為 (locutionary act) に発語内の力 (illocutionary force) を見い出し、サールはそれを5つの型に分類する。(次の文献を主に参照しました: -- 中山康雄, (2002), "行為としての発話" (大阪大学大学院人間科学研究科紀要) : http://goo.gl/kWHj4Z [PDF])
 --bibliography--
  Kroon, C., (1995), Discorse particles in Latin (Amsterdam studies in classical philology 4), Amsterdam.


【 quō dēbeō 】
quō = odiō ですので、これに permotus esse を補って読みます:
 「それ(憎しみ)によって私が(駆り立てられて)当然である」
あるいは、可能性としては低いですが、(OLD debeo 4) の「~を支払う義務がある」という意味でとって、quo の奪格を odio に牽引されたものと見なし (Bennett 250, 5) 「それをお前に返さねばならない」と読むことも可能に思います。いずれにせよ、ここはこれまでカティリーナがキケローに対して謀ってきたことに対して沸々と湧きあがってくる個人的な憎しみの情を抑えて、執政官として冷静に対処しようという態度が表明されている箇所であると思います。


【 quae . . nūlla 】
  「いかなる quae (= misericordia) も(お前に値し)ない」となります。


【 paulo ante 】
  「少し前に」(cf. 1.9 (5) paulō ante lucem)


【 vēnistī . . in senātum 】
senatum は場所としては今演説が為されているこのユッピテル・スタトル神殿のことです。
 「お前は元老院にやってきた」


Edit
Edit
2014/09/19 (Fri) 11:54:08 Re: Catil. 1.16 (1) - 兎狐

のらんぶるさん

仰るような quod の用法は馴染みがなく、調べたところ Augustinus 以降の後期ラテン語に特徴的なもののようで古典期には現れないそうです (L-S s.v. quod V)。また、この quod は名詞的な従属文 "the fact that" ではなく副詞的な従属文 "because" を導入するものであるのは間違いないかと思います (Woodcock §241)。そして、従属文中の動詞の法 mood が直説法であるということから、それはキケロー自身の意見であって他の誰かの主張が引用されているわけではなく、確信的に主張されているということが、文脈からもまた読み取られます。

quae . . quibus abs te initiata sacris ac devota sit の解釈がちょっと違ったかなと思うところがあります。initiare には「(あるものを)聖別する」という意味があるようです。すると、quae (sica) を主語として abs te をinitiata と devota の両方にかけることができます。
  「そして、それがお前によって、何らかの儀式によって聖別され、呪(まじな)いが掛けられた」

それがどのような儀式であったか、キケローは知らないという。その理由として、カティリーナが執政官の体に剣を突き立てなければならないと考えているからだと。しかし、これでは意味が通りませんので、この理由を "nescio" の方ではなく、"initiata ac devota sit" の方にかかるものとすると、意味が通るように思います。すなわち、何故そのような儀式によってカティリーナが短剣に呪いをかけたのか、その理由が quod 以下で述べられている可能性が大きいように思います。


Edit
Edit
2014/09/19 (Fri) 20:32:22 Re: Catil. 1.16 (1) - nolimbre

兎狐さん

quod のこの用法は後期ラテン語の用法なんですね.それならここで採るのは確かに不適切です.
動詞が直説法であることとあわせて了解しました.
また,initiare の「聖別する」という意味は初めて知りました.これなら文法的にも自然だし意味も通りますね.
これで文全体がよく分かりました.ありがとうございます.


のらんぶる

Edit
Edit
2014/09/20 (Sat) 14:17:38 Re: Catil. 1.16 - 兎狐

のらんぶるさん

こちらこそ、ありがとうございます。おかげで理解を深められました。また何か理解に詰まるところがありましたらお願い致します。

Edit
Edit
2014/09/23 (Tue) 23:49:11 Re: Catil. 1.16 (4) - 兎狐

担当分です。
ぎりぎりになりましたが、なんとか期限内に提出できて一安心です。

(4) sī hoc post hominum memōriam contigit nēminī, vōcis exspectās contumēliam, cum sīs gravissimō iūdiciō taciturnitātis oppressus?

「もしこのようなことが歴史上誰かに降りかかったことがないのなら、お前は言葉による侮辱を待ち望んでいるのか?お前は沈黙という最も重い判決によって打ちのめされたのだから」→「歴史上このようなことは誰の身にも起きたことがないのであれば、お前は言葉による侮辱を待ち望まずともよかろう。お前は沈黙という最も重い判決によって打ちのめされているのだから。」

sī : 開放条件 (open condition, Woodcock §191) を導入する。直接法 (contigit) が用いられる。 / hoc : (pron. demonstr.) {neut. sg. nom.} = カティリーナに起こった事、すなわち元老院にやって来て誰からも挨拶を受けないということ. / post hominum memōriam : 「人類の記憶の後」と書いて「歴史上」と読む. / contigit : contingere {pf. ind. act., 3sg.} 「(dat. に)降りかかる」 / nēminī:nēmō {sg. dat.} 「誰にも~ない」. "contigit nēminī" = double cretic clausula (タンタタン・タンタタン) / vōcis : vox {sg. gen.} 性質の属格 (gen. of description or quality, Woodcock §84) / exspectās : exspectāre {pres., ind. act. 2sg.} 「待つ」 / contumēliam : 「侮辱」; cf. 1.9 (3) quōs ferrō trucīdārī oportēbat, eōs nōndum vōce volnerō! (それにまだ言語によって、剣によって惨殺されるべき者どもを斬り付けていない) / cum : 理由の導入. / sīs . . oppressus : opprimere {pf. subj. pass. 2sg.} / gravissimō : (adj.) gravis {superl., neut. sg. abl.} / iūdiciō : iūdicium (n.) {sg. abl.} / taciturnitātis : taciturnitās (f.) {sg. gen.} cf. gen. of vōcis ; 「沈黙」 [< tacēre (黙っている)]

Edit
Edit
2014/09/25 (Thu) 12:12:01 Re: Catil. 1.16 (3) - fnkm

遅れてすみません。訳だけでお願いします。

quis te ex hac tanta frequentia, tot ex tuis amicis ac necessariis salutavit?

「これほど多くの群衆から、これだけ多くのお前の友人や身内から、誰がお前に挨拶したか?」

Edit
Edit
2014/09/25 (Thu) 23:50:56 Re: Catil. 1.16 (3) - 兎狐

fnkmさん

ありがとうございます。

quis tē ex hāc tantā frequentiā, tot ex tuīs amīcīs ac necessāriīs salūtāvit?

>「これほど多くの群衆から、これだけ多くのお前の友人や身内から、誰がお前に挨拶したか?」

この箇所から、カティリーナが一人項垂れ離れて座っている、あの絵画のモチーフとされた場面です。

では、三点だけ確認させて頂こうと思います。


① frequentiā
「群衆」これは議場内の議員のことで、hac tanta ~ 「これほどの大群衆」は、かなり大げさな言い方ではないかと思います。

② necessāriīs
「身内」とは、amīcī と共にこれも元老院議員のことが言われます。これを聞いた多くの議員は「私がカティリーナの身内だと?友人だと?」と心で反発を覚えたことでしょうから、このように言うことによって、議員ら一人ひとり自らの立ち位置について白黒はっきりしてもらおうという狙いがあるのではないかと思います。

③ tot
これは数量を問うものなので、そのように訳出します。frequentia と amici ac necessarii が示すのが同じ対象なのでお訳しのようにしたくなるところですが、ここはキケローの原文に従っておきたくと思います。
 「これほどの大群衆の中で誰が、お前の友人や縁深い人々の中でどれだけの者が、お前に挨拶をしたのか。」

___

quis : (pron. interr.) {masc. sg. nom.} salutare の主語を尋ねる / tē : (pers. pron.) {sg. acc.} salutare の対格目的語. / ex : (prep.) 出処を示す. / hāc : (demonstr. adj.) 議場にいる議員を指す. / tantā : (adj.) tantus {fem. sg. abl.} ここは量の強調 / frequentiā : 「大群衆」 (OLD s.v. frequentia 3b). 元老院議員の数は限られており、「大群衆」という大げさな表現は誇張。 / tot : (adj.) {indecl.} 「どれだけ多くの(者が)」 / amīcīs : amīcus {masc. pl. abl.} / necessāriīs : necessārius とは身近な人の事。 / salūtāvit : salūtāre {pf. ind. act., 3sg.} 「(acc. に)挨拶する」


Edit
Edit
2014/09/29 (Mon) 09:27:45 Re: Catil. 1.16 (2) - 810874

兎狐さん

お返事が遅くなってすみません。今回も勉強になるコメントをありがとうございます。

sīc ... loquar, nōn ut odiō permōtus esse videar
この部分,あまりよく考えずに投稿してしまって恥ずかしいのですが,
・結果文だとすると「…と思われないような話し方をしよう」
・目的文だとすると「…と思われないために話そう」
という感じになるでしょうか。そうすると,(3), (4) の内容と合わせて考えたときに,結果文のほうがややすんなり繋がる気がしますが,目的文でも意味が通らないということはないかもしれません(はっきりしない言い方ですが…)。

enim
この enim は字義上の意味(根拠の導入など)が薄れていて,スピーチ・アクト理論的に解釈したほうがよいということだと理解しました(それでも無理に訳出するなら英語の you know や indeed といった感じでしょうか)。

quō dēbeō
投稿したときには何か勘違いしていたようですが,納得しました。quō が odiō と一致しているので奪格なのですね。

vēnistī ... in senātum
ここも,なぜか「行った」と訳していましたが,辞書的にも状況的にも「来た」とすべきでした。

Edit
Edit
2014/09/30 (Tue) 15:35:33 Re: Catil. 1.16 (2) - 兎狐

810874さん

お返事ありがとうございます。

この ut 節は比較文 -- comparative cl. of manner (Woodcock, §253) -- として捉えたいところですが、しかし接続法が用いられているのでそのように読むことはできません。すると、消去法的に結果文か目的文かということになろうかと思います。確かに、decernere (決定する) や adducere (導く) といった動詞は名詞的目的文を取ります。ここの主文における loquar の接続法が意志を表していることから、この ut もその延長で同じように目的文と言えるのかもしれません。ただ、副詞的目的文は書かれている通り主動詞の目的として「~するために」と自然と訳されることができるはずですが、ここをそのように訳すと文脈を踏まえると「う~ん」となってしまいました。しかし仰ることを受けて改めて考えてみると、なるほどそのように訳すことも出来るかもしれません。本当の所、どうなのでしょう。ちょっと結論できませんので、保留という事にしておきましょうか。

その他のご感想もありがとうございました。


Edit
Edit
名前 URL
件名
Image
編集削除キー