2014/06/05 (Thu) 22:41:20 Catil. 1.12 - 兎狐

さて、ようやく第1演説の1/3まで到達しました、お疲れさまです。第12節以降もよろしくお願いします。

<前節までのカティリーナ>
カティリーナにローマから出て行くよう言い渡したキケローは、これまでに何度もカティリーナによる要人暗殺を私的対応で阻止してきたことに触れ、自分の貢献を強調。引き続き、カティリーナにローマを出て行くよう勧告を続けます。

(1) fnkmさん — 6/15
nunc iam aperte rem publicam universam petis, templa deorum immortalium, tecta urbis, vitam omnium civium, Italiam totam ad exitium et vastitatem vocas.

(2) 810874さん — 6/16
qua re, quoniam id quod est primum, et quod huius imperi disciplinaeque maiorum proprium est, facere nondum audeo, faciam id quod est ad severitatem lenius, ad communem salutem utilius.

(3) noukoknowsさん — 6/17
nam si te interfici iussero, residebit in re publica reliqua coniuratorum manus;

(4) gtlttnさん — 6/21
sin tu, quod te iam dudum hortor, exieris, exhaurietur ex urbe tuorum comitum magna et perniciosa sentina rei publicae.

___
[12] text (perseus) http://goo.gl/Hi6PfT

Edit
Delete
2014/06/17 (Tue) 00:10:14 Re: Catil. 1.12 - fnkm

少し締め切りを過ぎてしまいました。すみません。

nunc iam aperte rem publicam universam petis, templa deorum immortalium, tecta urbis, vitam omnium civium, Italiam totam ad exitium et vastitatem vocas.

「既に今や明白に国家全体をお前は攻撃している。不死なる神々の神殿を、街の家々を、市民全員の生活を、イタリア全土を破滅と荒廃へとお前は導いている(呼んでいる)。」

nunc iam: OLDのnunc 2 aにあるようにiamはnuncの強調か。「今や既に」

templa, tecta, vitam, Italiamはrem publicamよりも小規模の物で、これらは全部vocasの目的語であり、この文はpetisの次のコンマで二つの部分に別れると考えられる。前の部分で「国家全体を攻撃している」と言い切り、後の部分ではより細かい具体的な項目を並べることで内容を敷衍している。

vocas: OLD 8a To bring (into a condition or situation)にこの箇所が用例として挙げられている。

Edit
Edit
2014/06/18 (Wed) 00:00:46 Re: Catil. 1.12 - noukoknows

締め切りを1分過ぎてしまいましたが, どうぞよろしくお願いします.

(3) nam si te interfici iussero, residebit in re publica reliqua coniuratorum manus;

「何となれば(=nam), もしお前が殺されるようにと私が(近い将来に)命じたとするならば, 陰謀者らの残党集団(reliqua manus)が国家の内に(=in re publica)居残ってしまうであろうから」.

iusseroの時制がfuture perfectということで, 苦肉の策として「(近い将来に)命じた」という風に訳出してみましたが, どうでしょうか...

Edit
Edit
2014/06/19 (Thu) 13:48:24 Re: Catil. 1.12 (1) - 兎狐

fnkmさん

ありがとうございます。では、疑問点にお応えしながらまたコメントを少しさせて頂きます。

nunc iam apertē rem pūblicam ūniversam petis, templa deōrum immortālium, tecta urbis, vītam omnium cīvium, Italiam tōtam ad exitium et vāstitātem vocās.

> 「既に今や明白に国家全体をお前は攻撃している。不死なる神々の神殿を、街の家々を、市民全員の生活を、イタリア全土を破滅と荒廃へとお前は導いている(呼んでいる)。」

【 nunc iam apertē 】
 直前まで「陰謀」としての数々のカティリーナの試みに言及されてきましたが、この nunc iam を境に、今現在のカティリーナの「明らかな」国家転覆の企てへと以降してゆきます。どちらかというとここは nunc が iam を強調していると言えるのではないかと思います。OLD では "already now" という変な訳語しかないので、L-S jam A1(β) を参照されると多少すっきりするかもしれません。iam だけで過去から現在への時制のシフトを表現することが可能なので、それに nunc を添えることでコントラストが強調されているといった感じを受けます。


【 rem publicam universam petis 】
 rem publicam universam ということでキケローが思い浮かべている具体的な内容は、以下で述べられる templa deorum . . civium のことです。そのため、petis で文は一端完結しますが、asyndeton で次の文に繋がれます。ですので、仰る通り
> 前の部分で「国家全体を攻撃している」と言い切り、後の部分ではより細かい具体的な項目を並べることで内容を敷衍している。
ということになります。


【 ad exitium et vāstitātem vocās 】
> vocas: OLD 8a To bring (into a condition or situation)にこの箇所が用例として挙げられている。
お示しの通りです。
 「(イタリア全土を)お前は滅ぼし荒廃させようとしている」


Edit
Edit
2014/06/19 (Thu) 22:17:55 Re: Catil. 1.12 (4) - gtlttn

思っていたよりも早くできたので、提出してしまいます。添削よろしくお願いします。

【読み方】sīn tū, quod tē iam dūdum hortor, exiēris, exhauriētur ex urbe tuōrum comitum magna et perniciōsa sentīna reī pūblicae.

【文法解釈】sīn:「しかしもし」(exiēris までが sīn 節)。quod: 中性単数関係代名詞の、先述の内容を受ける用法(cf. Gildersleeve § 524)の亜種?内容的には後出の exiēris を指している。iam dūdum:「いまやずいぶん前からのことになるが」。hortor:「促す、勧める」(直説法現在能動 1 人称単数)。なお、例えば英語で ever since などの副詞とともに使う動詞は完了形になるのが普通だが、ここでの事例のように過去から継続して現在もなお続いているような行為をラテン語では(ドイツ語同様)現在形によって表す(cf. Gildersleeve § 230)。exiēris:「出て行ったら」(< exeō 接続法完了能動 2 人称単数[=現在の可能的条件])。exhauriētur:「汲み出されるだろう」(< exhauriō 直説法未来受動 3 人称単数)。ex urbe:「この町から」。tuōrum comitum magna et perniciōsa sentīna reī pūblicae: tuōrum comitum と reī pūblicae がともに属格で magna et perniciōsa sentīna(「大量の危険な〔船底にたまる〕汚水」)を修飾しているかたち。このうち tuōrum comitum は並列を表す属格(cf. Gildersleeve § 361)。

【訳】しかしもしお前が、これはかねてより私がお前に勧告してきたことでもあるが、出ていったなら、この町からはお前の仲間どもも 、つまり国家の〔船底にたまった〕大量かつ危険な汚水も排出されることになるだろう。

Edit
Edit
2014/06/22 (Sun) 22:27:19 Re: Catil. 1.12 (2) - 810874

だいぶ期日を過ぎてしまいました。すみません。

quā rē, quoniam id quod est prīmum, et quod huius imperī disciplīnaeque maiōrum proprium est, facere nōndum audeō, faciam id quod est ad sevēritātem lenius, ad commūnem salūtem ūtilius.
「それゆえに,第一級でありこの権威と祖先たちの教えにとって特別であるところのことを,わたしはまだあえて行なわないので,厳しさという点ではかなり寛大で,公共の安全のためには有益であることを行なおう。」

quā rē: 前文を受けて「それゆえに」。
quoniam: facere nōndum audeō までで節を作る。
huius imperī: 前文の内容からいえば「国家全体の権威にとって」という感じか。
proprium: 「特別な」という感じか。よくわからない。
facere nōndum audeō: facere の目的語は id quod est prīmum ... proprium est だが,これは元老院最終勧告のこと?
faciam: 可能性の接続法で,穏やかな主張を表す用法。「行なおうと思う」。
ad sevēritātem: ad は “with regard to” の意味。「厳しさと言う点では」。
commūnem salūtem: 1.11 (2) の summa salūs reī pūbulicae と同じ意味だと思う。

次回の期日なのですが,ちょっとここのところ忙しくなってしまったので,三週間後ということにしていただけると助かります。よろしくお願いします。

Edit
Edit
2014/06/23 (Mon) 01:24:52 Re: Catil. 1.12 (3) - 兎狐

のうこさん

ありがとうございます。遅くなりましたが、少しコメントをさせていただきます。

nam sī tē interficī iusserō, residēbit in rē pūblicā reliquā coniūrātōrum manus;

【 nam 】
直前で「私はお前の処刑を命じない」と言われたことの理由が導入されます。


【 sī tē interficī iusserō 】
のらんぶるさんご担当の 1.5 (3) にも同じ表現が出てきて、そこで分かりやすく解説して下さってますので、そのまま引かせていただこうと思います:
* * *
 iusserō < iubeō, -ēre, iussī, jussum; futperf. 1sg.
  この未来完了は,未来形で表されている主文(erit verendum mihi 以下)の内容が達成される暁には
  必ず既に達成されているはずの内容を述べるときに使われるものです.
  未来完了のこの用法について,泉井「ラテン広文典」の「未來完了の特殊用法」§412 より引用します:

  <引用ここから>
  直接法未來完了形は,ある行爲が未來において必ず《完成》されるものとしてあらわされるときに用いられる(§177).完遂未來 (fūtūrum exactum) とも稱されるゆえんであって,日本語で《できた(な)ら,それをしよう》というときの《できた》に似たところがある.これをラテン語でもやはり未來完了を用いて,
   Ego sī potuerō (未來完了), faciam (未來).  私は,もしできたらしよう.
  未來における一つの行爲に對して,同じく未來において先立って完成されてあるべき行爲または過程は,未來完了においてあらわされる.
  <引用終わり>
* * *
つまり、この条件のものでは必ず「主文」という帰結が起こるという、キケローの強い信念が表れていると言えるでしょうか。


【 residēbit in rē pūblicā reliquā coniūrātōrum manus 】
上手に訳されますね。 coniuratorum は動詞 coniurare の完了受動分詞 coniuratus の男性複数属格で、お訳しの通り「共謀者」となります。manus は普通「手」ですが、日本語で「人手」や「手先」と言われるのと同じで、カティリーナの「手」となって動く者(集団)という風に読めますね。それを修飾する reliqua は「お前を欠いた」と読めますから、reliqua manus を「残党集団」と訳されていることからはのうこさんの深い理解を読みとります。


Edit
Edit
2014/06/24 (Tue) 11:16:09 Re: Catil. 1.12 (4) - 兎狐

gtlttnさん

ありがとうございます。お待たせ致しました。

> 【読み方】sīn tū, quod tē iam dūdum hortor, exiēris, exhauriētur ex urbe tuōrum comitum magna et perniciōsa sentīna reī pūblicae.

exiēris は exieris ですかね。以下で確認したいと思います。

>【訳】しかしもしお前が、これはかねてより私がお前に勧告してきたことでもあるが、出ていったなら、この町からはお前の仲間どもも 、つまり国家の〔船底にたまった〕大量かつ危険な汚水も排出されることになるだろう。

お訳しの通りかと思います。

___

お書き下さった文法解釈が充実してますので、私からは少しだけ補足させていただくに留めます。

【 sīn tū . . exieris 】
exieris は exīre の直接法未来完了として読みます。直前の sī tē interficī iusserō と対応します。また、未来完了の活用形は「完了幹+esse の直接法未来」という構造で理解することができますので、exīre の 直接法未来完了2人称単数形は exi-eris あるいは exīv-eris となります。


【 quod tē iam dūdum hortor 】
この quod は = id quod として読むことができます。id quod は 1.7 (2) にも出てきましたが、ここも同じように挿入句を導入します。


【 sentīna 】
ちょうどギリシャ語の ἄντλος に当たる語で、意味としてはお書きの通り「船底の汚水」 が原義とされます。ここでは隠喩として「社会の底辺にたまる汚物」というような、強烈な意味で用いられてますね。


Edit
Edit
2014/06/26 (Thu) 02:15:42 Re: Catil. 1.12 (2) - 兎狐

810874さん

ありがとうございます。ご丁寧にご連絡ありがとうございました。お忙しい時は無理なさらず、ご自分のペースを大切にしてくださった方が私としても嬉しく思いますので ^^

> quā rē, quoniam id quod est prīmum, et quod huius imperī disciplīnaeque maiōrum proprium est, facere nōndum audeō, faciam id quod est ad sevēritātem lenius, ad commūnem salūtem ūtilius.

>「それゆえに,第一級でありこの権威と祖先たちの教えにとって特別であるところのことを,わたしはまだあえて行なわないので,厳しさという点ではかなり寛大で,公共の安全のためには有益であることを行なおう。」

しっかり文脈を踏まえて読まれてますね。Bravo!です。

___

【 quā rē 】
直前を受けて、「今やお前は明らかな暴挙にでてきたのであるから」という内容を読みとります。


【 quoniam id . . facere nōndum audeō 】
この理由文は解されているとおり "faciam . ." の理由ですね。
 「私は真っ先に為されるべきところの、この職務と父祖の教訓に適うところの措置をとることを敢えて控えるのであるから」

【 id quod est prīmum, et quod huius imperī disciplīnaeque maiōrum proprium est 】
この primus の意味するところは上に訳出したように「真っ先に為されるべき」ということではないかと思われます。次の . . proprium est と合わせて、第3節と第4節で述べられたところの内容が踏まえられています。つまり、ご推察の通り元老院最終決議によって執政官が元凶を断つ、すなわちリーダー格の人物を処刑する、ということです。なので、huius imperum とはキケローの執政官職のこと、disciplina maiorum 「父祖の教え」とは PScipio や Ahala, Opimius といった人々の対処のこととして読むことができます。ちなみに、proprius は属格をとって「(属格)に適合した」という意味になろうかと思います。

faciam 以降はお読みの通りですので、省略いたします。


Edit
Edit
2014/06/28 (Sat) 00:31:21 Re: Catil. 1.12 (2) - 810874

兎狐さん

添削ありがとうございます。

> 次の . . proprium est と合わせて、第3節と第4節で述べられたところの内容が踏まえられています。
とても納得がいきました。この部分は少し唐突なようにも感じたのですが,きちんと以前の内容と呼応していたのですね。

> ちなみに、proprius は属格をとって「(属格)に適合した」という意味になろうかと思います。
なるほど,僕の手元にある辞書には見当たらなかったのですが,調べが不足していたようです(というか,そもそもかなり無理な訳になっていましたね…)。

今回も勉強になりました。次回の担当までには少し多めの猶予を頂きましたが,またよろしくお願いします。

Edit
Edit
2014/07/01 (Tue) 00:55:33 Re: Catil. 1.12 (2) - 兎狐

810874さん

ご丁寧にありがとうございます。お力になれてこちらとしても嬉しく思います。ありがとうございます。

proprius の意味ですが、ちょうど OLD proprius 5 の例文にこの箇所が引かれており、例文を見る限りではこのような用法はキケローに多いみたいです。

  5 Rightly belonging, suitable, appropriate

「~に属する」
  →「~に特有の」
  →「~に適合した」
というような意味の派生で理解できるようかと思います。

Edit
Edit
2014/07/01 (Tue) 20:35:05 Re: Catil. 1.12 (4) - gtlttn

兎狐さん

ありがとうございます。なるほど、未来完了の短縮形か!たしかに前文との並行関係を考えると、そのほうがよいと、私も思いました。

Edit
Edit
名前 URL
件名
Image
編集削除キー